冬至に食べる琉球料理「冬至雑炊(トゥンジージューシー)」

「寒さの増す頃、雑炊食す」

冬至は旧暦11月の中気にあたる節日(新暦の12月22日頃)で、中国の24季節の1つです。
中国では古来、冬至の日を正月とし、天神を祭る行事が盛大に行われていました。
沖縄で「冬至正月(トゥンジーショーグワチ)」と呼ばれるのをよく耳にするのは、その影響と思われます。
この日各家庭では冬至雑炊(トゥンジージューシー)といって、お米に豚肉や人参、田芋(たーんむ)や甘藷(かんしょ)などを入れて炊き込んだ雑炊を作り、祖先に供えたあと、家族でいただく習慣がありました。
冬至雑炊に混ぜ込む田芋や甘藷は、農作物に恵まれない沖縄の人々の生活にとって、なくてはならない食物であり、古くから庶民の主食として、重要な位置を占めてきました。
古来南方から伝わり、湿地作物として栽培されるようになった田芋は、庶民の食生活に深く定着し、正月、年日祝い、子供の出産など、めでたい晴れの日によく料理され、ふるまわれます。
また甘藷も1605年に野国総管によって中国の福建省からもたらされて以来、急速に沖縄全島にゆきわたり、去った沖縄戦を境に人々が米を常食とするまで、庶民を台風や旱魃などの飢饉から救った大切な食物でした。
また冬至と同じ月の戌の日に芋折目(ウンネーネイミ)という行事も催されており、芋がいかに重要な食物だったかがうかがわれます。
庶民の生活史は芋の生活史であり、庶民の歴史は芋の歴史であったと言えるでしょう。
冬至の頃からはトゥンジービーサと言って寒さが一段と厳しくなります。
冬至雑炊は冬の到来を告げる行事料理です。

田芋(たーんむ)

田芋は水田の中で次々と小芋を増やす事から、子孫繁栄をもたらす縁起物として、沖縄のお正月や盆などの行事料理には欠かせない食材です。
見た目は里芋に似ているのですが、里芋が畑で採れるのに対し、田芋は水田で採れます。
 栄養的にも、カリウムやカルシウム、鉄分、ビタミンAやCなどが豊富です。

甘藷(かんしょ)

さつま芋のことを、沖縄では甘藷(かんしょ)と言います。
もともとさつま芋は、江戸時代に琉球王国(現・沖縄県)から薩摩国(現・鹿児島県)に伝わり、そこでよく栽培されるようになりました。  
さつま芋という名称は、「薩摩藩から全国に広まった芋」を意味しています。
栄養的にも、カリウムやカルシウム、ビタミンを多く含み、その栄養バランスの良さから準完全食品とも呼ばれています。