三月三日(浜下り:ハマウリ)

旧暦の3月3日(2024年は4月11日)は女性の節句について、古くから沖縄に伝わる浜下り民話などから読み取れる当時と現在の違いなどをご紹介させていただきます

水信仰の要素が強い

旧暦の3月3日(2024年は4月11日)は女性の節句とされていますが、起源をたどってみると元々は女性の節句ではなく、中国での3月上巳(上旬の巳の日)の祓いに源を発し、農事にたずさわる前に心身の汚れを払い清める一種の祭り祓いで、農耕儀礼の一つだったそうです。

この行事に水が深く関係するのは、そこが祓い事の場だったからであり、本州にも流し雛という雛形の人形を川に流して人間の災厄や汚れを洗い流す習慣があるように、水の持つ信仰的要素が推察されます。

みそぎの浜下り

3月3日の浜下りには農事の祓いの意味が根底にあるのですが、時代の移り変わりと共に女性の節句となりその日は女性の不浄を払い落として身を清めるために浜下りをするという行事に変わってきました。

古くから沖縄に伝わる浜下りについての民話がありますのでご紹介します。

昔あるところに、非常に美しい娘が住んでいました。その娘のもとには夜な夜な美青年が忍んで来るようになり、娘は身ごもってしまいました。美青年が後にアカマター(蛇の一種)だった事を知って驚いた娘が母親に相談したところ、「3月3日にフーチ餅(よもぎ餅)を作って浜に下り潮水を3回かぶりなさい」と言われました。娘がその通りにしてみるとたちまち陣痛が起きてアカマターの子供が堕りて、元の美しい身体に戻ったそうです。

昔の人々が海水とよもぎを汚れを拭うものとして信じていたことが民話からも伺えます。

白砂を清浄なものとする観念も古くから各地にあり、墓参りや祭りの広場などに白砂を一面に敷き詰めたりするのも、そういう意味からきているのでしょう。

華やかな重詰め料理

浜下りの日は、女性と子供たちは思い思いのお重箱やよもぎ餅、三月菓子などを持ち寄って浜辺で楽しく過ごします。特に浜下りでよく作られる重詰料理は三月お重といい、海の幸を取り入れた華やかで食べてしまうのが惜しくなるくらいに色どりよく詰められています。

春のうららかな日差しを浴びて青い海原を見ながら、真っ白な砂浜でお重開きをする昔の浜下り風景を想像するだけで、何となく微笑ましい気持ちになってきます。

現在の浜下りはその由来も影をひそめ、家族全員でのピクニックを兼ねた娯楽行事になりつつあります。持参する料理も食生活の変化に伴って洋食がふんだんに取り入れられ、昔の重詰料理とはだいぶ違ったものになってきました。