盆(七月:シチグヮチ)

重箱料理1

今回は、旧暦7月13日~15日に行われる、沖縄のお盆についてご説明をさせていただきます。

農耕儀礼に仏教行事が流入

盆は、旧暦7月に行われる祖霊際で、十三日のウンケー(精霊迎え)から始まって、十五日(地域によっては十六日)のウークイ(精霊送り)に終わるまでの3日間、沖縄の各地域で盛大に営まれます。

2024年は、8月16日(金)~18日(日)が旧盆にあたります。

沖縄本島では盆のことをシチグヮチ(七月)と言い、「シチグヮチ・ショーグヮチ(七月・正月)という言葉もあるほど、深く民間の年中行事に定着している大きな祭りで、八重山や与那国などではソーロン(精霊)とも呼ばれているようです。

盆は、正確にはうらぼんえ(孟蘭盆会)と言い、インド語のウランバナ(非常な苦しみの意)が語源とされています。

この時期は、ちょうど第一期の稲の収穫が終わって、次の農耕に移る農事準備の期間にあたっており、その時期最初の満月の日(7月15日の中元節)に祖霊を招き、前半期の豊作を感謝すると共に、次期の農作の加護をも求めたものでした。

このように元来は、農耕儀礼として十五日の中元節が営まれていたのですが、のちに盆行事が流入することによって、仏教的要素の強い行事に変わっていったものです。

しかし、沖縄ではそれが必ずしも仏教行事であるという観念はなく、主に島固有の祖先崇拝の念から、祖霊を歓待し、加護を求めるという趣旨で営まれているようです。

その日は、親戚や知人が集まって祖霊を供養するため、来客の多い家庭では非常に忙しい時期となります。

ウンケー(精霊迎え)・十三日

盆行事はまず十三日の精霊迎えから始まります。

仏壇は明るいうちに拭き清めて、生花やちょうちんなどを飾って盆祭りの準備を整えます。

大正時代の頃までは、農村地域では、ムシナ(六品)と称するアダンの実、クニーブ(九年母)、白ちがー(小判餅)、メーガー(みょうが)、クーガー(なしかずら)、サトウキビなどの供物が、祖霊の食物として供えられていたようですが、食生活が豊かになった現在ではスイカ、パイン、バナナ、ミカン、リンゴ、マンゴーなどに代わるようになりました。またその他に、グーサンウージや芭蕉で作ったソーローウマ(精霊馬)なども飾られますが、これは祖霊のための杖や馬と考えられたものです。

十三日の夕方の料理には、ショーガージューシー(生姜雑炊)がつきもので、各家庭で料理され、ソーローメーシ(精霊箸:メドハギの茎で作った箸)とともに供えられます。

しょうがは、匂いが強いことから邪気払いの食品とされ、祖霊と一緒にやって来るチガリムン(餓鬼)にその膳を食べられないようにするためです。

この餓鬼には別にミンヌク(水の子:キビと甘藷、田芋の茎等を切り刻んで米粉と混ぜたもの)と呼ばれる供物が準備され、仏壇に供えられます。

お供えがすんだら、門前まで祖霊を迎えに行きます。

「ウートートゥ シチグァチ ヤイビークトゥ メンソーレ(ご先祖様、七月盆が来ましたから、どうぞおいで下さい)」と言い、合掌して祖霊を招き入れます。

ナカビー(中日)・十四日

十四日は、特別に決まった儀礼はありませんが、祖霊への料理は朝昼晩の三度、欠かさず供えられます。

朝は主におかゆ、豆腐の味噌汁、冬瓜に白ごま酢をかけた酢の物などが作られます。

また昼には砂糖団子(サーターダーグ)と冷やしそうめんが、ほとんどの家庭で供えられます。ソーメンを供えるのは本土の盆行事からの影響で、ちょうど本土では盆の頃がソーメンの原料である麦の収穫期にあたっていたため仏前に供えられたものでした。

夕食には、白ご飯、豆腐やしいたけの味噌汁、切り干し大根・昆布・冬瓜・豚肉・豆腐などの煮メ物、きゅうりとタコの酢の物、ゴーヤーの地漬などが出されます。

最近では、亡くなった人の好んだ料理を作って供える所もありますので、盆料理も各家庭によって若干違いがあるようです。

ウークイ(精霊送り)・十五日

十五日にも盆料理は供えられますが、朝昼の献立は、十四日の料理とだいたい同じもので、夕食には小豆ご飯と小煮などの豚汁に、きゅうりやもやしの酢の物がよく作られています。

一般的には、本島の盆料理は、豚肉をふんだんに使った献立になっていますが、八重山ではそれが精進料理に徹しており、高膳に9品が配膳されて供えられているようです。

また十五日には、自家での精霊送りがあるため、昼のうちに本家や門中などを訪ねて一族の祖霊供養を済ませておきます。

精霊送りは夜遅くから行われます。早く済ますと後生(祖霊)を追い立てる意味にとられ、非礼だと考えられるからです。全員が仏壇を拝んでからウチカビ(紙銭)を焼き、御三味、生花や線香、ソーローメーシ(精霊箸)などを器に入れて取り下げます。これをまとめて門前に運んで、「ウートウトゥ マタ ヤーヌン メンソーレ(また来年もいらっしゃって下さい)」と言い、合掌して精霊送りをします。

レシピ (「琉球料理のきほん 伝えよう沖縄の食文化」より)

硬(クファ)ジューシー | 松本嘉代子監修 琉球料理のきほん

琉球料理は、地域の風土に合わせた独自性と、医食同源に基づいた思想が特徴の料理です。オキハムは、沖縄の料理文化を次代に伝えるための、保存と普及に努めています。

硬(クファ)ジューシー

ショーガージューシー(生姜雑炊)は、クファジューシーに生姜を入れたものです。生姜は細かく刻み、他の具材と一緒に炊き込む前に入れます。